第十七章:紅白の庭――美生子十五歳の視点

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「お祖母ちゃんにも伝えなきゃ」  こちらの思いをよそに相手はスマートフォンを取り出している。  お前、それこそ真っ先にやれよ。たった一人の家族なんだから。  口には出せないままこちらがやきもきする。  ハルのお祖父ちゃんは年が明けてすぐに亡くなった。  一昨年(おととし)の夏に一人娘である清海おばさんに事故で先立たれてから、見掛ける度に「弱る」というか「衰える」感じだった。  今ではあの古い家にはハルとお祖母ちゃんしか住んでいない。 ――今日はお祖母ちゃんがパートだから。  そう言われて自分がここまで付き添ったのだ。無関係な人が見れば姉妹とでも思うだろうか。俺なんかチビだし、ハルの妹にすら見えるかもしれないな。  後数日で自分たちは十六歳になる。
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