第十七章:紅白の庭――美生子十五歳の視点

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「じゃ、行こう」  お祖母ちゃんへのメッセージを送り終えたらしい陽希がズボンのポケットにスマートフォンを入れて歩き出す。  また背が伸びたみたいだ。  学ランの肩の位置が少し高くなった後ろ姿で改めて気付く。  俺はもう伸びないだろうな。  早足で隣に並んで歩きながら無駄とは知りつつ背筋を伸ばす。  身長百五十五センチ、体重四十八キロ、ブラジャーはD65。受験期にバレエを辞めてから多少太って、胸は余計に大きくなった。  もうレオタードを着て女の役を踊らなくていい。髪もバッサリ切るには至らないものの、最近はハーフアップではなくポニーテールだ(一度一纏めに縛るヘアスタイルに慣れると、今まで何で半分だけ纏めて残りを下ろす中途半端な髪型にしていたのだろうと自分でも不思議になる。幼稚園でバレエを始めてからずっとその髪型にしていたから、鬱陶しくてもそこに慣れ切っていたのだ)。  でも、体は余計に「女」の形に相応しくなった。  フワフワと梅特有の濃い香りが取り巻くように流れてくる。  何となく路地に散らばった紅白の花びらを踏むのが嫌でスニーカーの歩幅を余計に広くした。
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