第十七章:紅白の庭――美生子十五歳の視点

5/9
前へ
/319ページ
次へ
「ハルも来月から梅苑生(ばいえんせい)か」  心は男なのに周囲が勧めるままに女子高に進んだ自分に対して、心と体に何の矛盾もないハルは共学校に行くのだ。 「うちは中学と大差ないセーラー服だけどそっちはブレザーだからかっこいいよ」  もし自分がこの学校に行ってもやっぱりブレザーのスカートを履くことになるのだろう。  学校には男の子も女の子もいるけれど、体の性別に合わせた制服を着る決まりに変わりはないから。  ジーンズを履いたスニーカーの足で大股に進んでいくアスファルトの上には、白と濃いピンクの花びらが相半ばする形で落ちている。  白、紅、白、白、紅、紅……。  一つ一つの花びらは小さな丸だが、いずれも他方の色に染まることはない。
/319ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加