第十七章:紅白の庭――美生子十五歳の視点

6/9
前へ
/319ページ
次へ
「お祖父ちゃんお祖母ちゃんも行けるなら公立がいいし、梅苑ならそこでいい成績取って推薦とか狙えばいいって」  振り向いたハルは何だか諦めたような笑いを浮かべていた。  角を曲がって、他のセーラー服や学ランの子たちの群れと分かれた所で秘かな声で付け加える。 「まあ、俺は橘高(きっこう)なんて端から無理だし、女でも蓮女(れんじょ)には行けなかったよ」  蓮女は自分の通う女子高だが、橘高とはこの地域でもトップの男子高――紗奈(さな)ちゃんの彼氏である大河(たいが)君の通う学校だ。  ふと去年の、といっても正確には四カ月と少し前のハロウィンパーティーでサンとアシタカの仮装をした二人が付き合っていると分かった時の胸の痛みが一瞬、蘇った。
/319ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加