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「お前ならすぐ出来るよ」
優しいし、見た目もいいし、何より体も本物の男なんだから。
相手のどこか挑発する風なギラついた光を宿した目からシュッと表情が消えた。
「だといいけどね」
きつそうな学ランの肩を微かに落として帰っていく道の先を見詰める。
自分としては本心から言ったのだが、ハルの中で求めていた答えではないのだろうか。
隣のペースに合わせて大股に足を進める内に仄かな梅の香りがまた鼻先を通り過ぎていく。
そういえば、ここの神社の境内にも梅の木があったな。
そう思いつつ見やると、境内の奥の、華奢な枝に白ともピンクともつかない花を咲かせた木の下のベンチに、セーラー服が二人並んで腰掛けていた。
おや、あれはさっきの子たちだ。傍の自販機で買ったらしいお茶のペットボトルを揃って所在なげな面持ちで啜っている。
淡く優しい色合いの花びらが時折こぼれて二人の周りに落ちるが、気に留める様子もない。
自分たちもあのように見えるのだろうかと思う一方で頭に閃くものがあった。
「ハル、今日予定ないなら、うちに寄ってく?」
この一年は学校も別々で相手は受験生なので、互いの家に行き来することもめっきり減っていた。
「お母さん、ちょうどカステラいっぱいもらったって言ってたし」
相手の蒼白い面にパッと懐かしげな笑いが灯った。
そうすると、もうすぐ十六歳のハルの顔はあどけなくなる。
「おばさんにも合格報告するか」
そうだ、うちのお母さんはお前のもう一人の母親だし、お前は俺の二日違いの弟だ。
この繋がりだけは守っていかなくてはならない。
日なたに出てまた微かに汗ばんだ首の下を手の甲で拭うと、自分より頭一つ分大きくなってしまった幼馴染みの一歩先に出るようにして道を進む。
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