第十八章︰カノジョではない彼女――陽希十六歳の視点

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第十八章︰カノジョではない彼女――陽希十六歳の視点

「購買部、もうアンパンしか無かった」  クラスメイトの杉浦は細い目を糸にして苦笑いする。  高校に入って半月。席が前後ろの関係で良く話すようになった男子生徒だ。  出身中学は異なり、まだ互いに遠慮はあるものの基本は人懐こく話しやすい相手である。 「これじゃちっちゃい子のおやつだよ」  買ってきたばかりの紙パックの牛乳にストローを立て、包装のビニル袋を破って丸いパンに齧り付く。 「弁当忘れると大変だよね」  こちらは弁当箱に詰めた昨日の夕飯の唐揚げを水筒の緑茶と一緒に飲み込む。
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