第十八章︰カノジョではない彼女――陽希十六歳の視点

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「いや、親と喧嘩しちゃってさ」  杉浦はアンパンを頬張りながら苦笑いする。 「今朝はうちの母が弁当も水筒も用意してくれなかったからそのまま出てきたんだ」 「そうか」  いや、水筒くらい自分で用意できるだろ。水洗いした容器に飲み物を注ぐだけだ。むしろ、そんなことまでお母さんに毎日やってもらってるのか。  それは口には出せないまま、これも夕べの残りの金平牛蒡(きんぴらごぼう)を噛み砕いて緑茶と共に飲み込む。  口の中に金平の辛味が中和されて流された代わりに微かな苦味が残った。
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