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その翌朝早く、脱ぎ散らかした服もそのままでダブルベッドの真ん中で呑気に寝入っている夫を残して家を出た。
普段買い物に行く時のバッグにお金と保険証とカード類だけ入れた、最低限の荷物だ。
本当は体を良く洗って出たかったが、夫が物音で起きてくる事態をとにかく回避するために最大限早く脱出することを優先したのだ。
まだ灯りも点いていないマンションのロビーを通り抜ける時に大きな笹飾りを目にして、そうだ、昨夜は七夕だったと思い出した。
クリスマスと違ってひたすら自分の現実に溺れている大人二人きりの家庭だったのですっかり忘れていた。
朝日を背にして影になった笹飾りは何だか置き去りにされた花嫁のように見えた。
色とりどりの短冊や飾りを着けて華やかに装っているけれど、一夜明けた今日の昼間にはゴミ捨て場行き。
自動ドアの外に出ると、嵐から晴れ上がった朝の街からムワッと纏わりつくような蒸し暑い空気が押し寄せた。
故郷に帰るというより夫のいる所からひたすら遠くに逃げたい気持ちでまだ人影も疎らな道を駅に走った。
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