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第十九章:私とあなたのクリスマス――美生子十六歳の視点
“……Make my wish come true”
“All I want for Christmas is you, yeah.”
――シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、ズズンズ、ズズズ……。
プレイヤーからアカペラの後に鈴の鳴り響く間奏に続く曲が流れ出した。
「毎年、これがどっかの店で流れ出すともうクリスマスだなって思う」
こちらの言葉にソファに腰掛けたハルも笑って頷く。
「定番だよね」
マライヤ・キャリーの「恋人たちのクリスマス」。
原題は“All I want for Christmas is you”、「クリスマスに欲しいのはあなただけ」だ。
直訳だと一人称の文章になって日本語の感覚だとタイトルとしては長過ぎるせいか、「恋人たちのクリスマス」と三人称視点の体言止めに改変されている。
“I just want you for my own, more than you could ever know”
実際の英語の歌詞をブックレットで見てもちょっと過剰なくらい“I”“you”、「私」「あなた」と当事者二人の目線が強調されている。
これも主語や主体をよく省略する日本語というか日本人の感覚からすると、特に女性歌手のラブソングとしては違和感があるかもしれない。
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