第十九章:私とあなたのクリスマス――美生子十六歳の視点

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「そうなんだ」 “Santa Claus won't make me happy, with a toy on Christmas day”  歌姫(ディーヴァ)の明るく楽しげだが厚みのある歌声が流れる中、ハルはコバルトブルーのフリース――今は家の中だしお客さんはハルだけだから下に窮屈なブラジャーは着けていない――に中学校時代の群青の体操着のズボンを履いた自分の姿を見詰める。  相手はまだ新しいボタンシャツの上にクリスマスらしいエメラルド色のセーター、布地もまだ固い感じのジーンズを履いていた。  俺ももうちょっとクリスマスパーティに相応しい格好にすれば良かったかな。  そう思ったところでハンドクリームを差し出した手の首をガサついた大きな手に掴まれた。
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