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「先週仕分けのバイトに手袋せずに行ったらすっかり荒れちゃって」
苦笑いして語る幼なじみにハンドクリームを差し出すと、今度はあっさり受け取る。
「バイトしてるんだ」
今、初めて聞いた話だ。
「単発で募集あったの見たからさ」
ハルはどうということもない調子で答えると、クリームの蓋を外して中身を捻り出す。
「高校生も結構いるよ」
話しながらアカギレした手の甲にクリームを広げると、人工的な薔薇の香りがさっと広がった。
他人が塗っている傍にいると結構きつい匂いだと今更ながらに感じる。
「ハル君はちゃんと働いて偉いねえ」
脱いだコートをハンガーに掛けるお母さんの背中がしみじみとした声を発した。
俺がバイトすると言ったらお母さんは賛成するか?
高二で国立文系を目指すクラスに入って今日だって予備校の冬期講習があったのに。
そう思うが口には出せない。
振り向いたお母さんはどこか寂しい笑いを浮かべて自分に告げる。
「シチューはもう作ったから準備手伝ってちょうだい」
「分かった」
「俺も何か手伝います」
クリームを塗り込んだためにアカギレが却って浮き出て見えるハルも近付いてくる。
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