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第二十章:ここではないどこかで――陽希十七歳の視点
――タン、トゥーン。
玄関からベルの電子音(『ピンポーン』のような軽やかな音色ではなくもう少しくぐもった響きだといつも思う)が響いてきた。
ミオだ。
ゆっくりした押し方のリズムで分かる。
「はいはい」
自分より先にスモーキーピンクの半袖ブラウスを着たお祖母ちゃんがテーブルに手を付いて重たそうに立ち上がった。
年取ったな。その所作に改めて感じる。
今年確か七十一歳になるお祖母ちゃんは同世代の中では決して老けた部類ではない。
むしろ、お母さんとお祖父ちゃんが亡くなって働きに出てから若返った印象すらあった。
だが、ちょっとした瞬間にやはり老いが覗くのだ。
ブラウスの後ろ姿も昨日まで一緒に旅行していた貴海伯母さん(こちらももう五十近いが)と比べても何となく骨の浮き出た老いが透けて見える気がする。
お祖母ちゃんとはこの先いつまで一緒にいられるのだろう。
俺の家族はもうこの人しか残っていない。
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