第二章:七夕の二人――清海《きよみ》の視点

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 何とか実家に帰り着いたが、そこも安住の地ではなかった。  洋亮(ようすけ)さん(これが元夫の名だ。ごく一般的な名前だし、字面も悪くはないのだが、今となっては忌まわしさしか感じない)が複数の女性と浮気していた、本人は逆ギレして開き直るだけ、自分としても不信や嫌悪を覚えてしまいもう一緒に暮らすのは無理だと感じた。  本当に目にして、されて、おぞましかったことは言えないまま両親にはそんな風に話したのだが、二人にはわずか二年で逃げ帰って離婚しようとしている娘が憐れむべき保護の対象より叱責すべき軽率で浅はかな困り者としか映らなかったようだ。 ――離婚してこれからどうするのか?  近場で適当な仕事を見つけて働くというのが正解なのだろうが、正直、今は何もしたくない。 ――半年前まであの人の子供を産むと笑って話していただろうが。  半年前はあの人の本性を知らなかったからとしか言いようがない。 ――あんなに高いホテルで結婚式挙げて、皆にお祝いしてもらって、それで二年ばっかりで別れたなんて人、身内には誰もいないよ。  式場を決めたのはあの人の意向だし、何年経ったら別れてもいいの? 十年? 二十年? 身内の顔色を窺う内に一生が終わりそう。 ――正直、旦那から浮気されるような人は、本人も可愛げがなかったりして嫌われる人だから。  だから、私が我慢しろと? ――男の人は若い内は一回、二回間違いがあるもんなんだから、すぐに離婚なんて早まらないでもっと良く考えなさい。  もし、不倫を働いたのが私なら、こんな風に庇われるだろうか。
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