第二十一章:偽りを断つ時――美生子十八歳の視点

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“バイト代入ったし、入学祝い兼誕生祝いにファミレスで好きなものおごるよ”  進学先が決まってからそんなLINEが来て、近所のファミリーレストランでドリンクバーのお茶を飲みながら二人でそれぞれ好きなスイーツを頼んだ。  一応は自分が食べた分も払えるくらいのお金は持ってきてあるし、このクリームあんみつは苺パフェより二百円以上安いから多分ハルの手持ちで足りなくなることはないだろう。  そんな算盤を頭で弾きながらいびつに削り取ったアイスクリームを口に運ぶ。  シャリッと舌の上で小さな霜柱が崩れるような感触がしてうっすらしたバニラの甘みが口の中に広がった。  冷たさと甘さを中和させるべく淹れたての熱い緑茶を本来の一口の半分ほど含む。 「アパートの最寄り駅まで新幹線と電車を乗り継いで二時間以上かかるんだよね」  この緑茶はちょっと苦過ぎると思いつつ、また中和させるべくバニラのアイスを下の餡蜜(あんみつ)に和えるようにして掬う。  クリームあんみつは確かに好きだが、ハルの頼む物より少しでも安い物をと思って頼んだのは否定できなかった。  親から予備校にまで通わせてもらって東京の私大に進む自分。  高校生でもうアルバイトしている一学年下の幼なじみ。  本来なら自分が奢ってもらうような立場でないのは知っている。
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