第二章:七夕の二人――清海《きよみ》の視点

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 夫からもメールが来た(電話は直接声を聞くのが嫌で着信拒否設定にしたが、離婚に関する事務的なやり取りはする必要があると思ったのでメールには応じた)。 “朝起きたらいない。何回電話しても出ない。どこにいる?” “離婚届が送られてきたけど、どういう意味?  詐欺に遭った気分だ” “何でこっちだけ悪いことにされる。人のパソコン勝手に見て大騒ぎしたのはそっちだろ” “妊娠中は仕方ないけど、流産した後も『具合が悪い』だ『そういう気になれない』だ理由付けてお前が拒否した。同じベッドで寝ていて邪魔者扱いされているみたいで辛かったよ”  とにかく彼の捌け口に進んでなろうとしなかったこちらが悪いと言いたいらしい。 “立場が逆であなたが病気で仕事も辞めて家にいるのに、私が毎晩あちこちの男とセックスして、男子中高生を買うような犯罪までして、戦利品みたいに画像や動画をパソコンに取り集めていたら許しますか? よくあんな破廉恥な真似して被害者面できますね”  こちらからそう送ると、彼からの返信はなかった。
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