第二十一章:偽りを断つ時――美生子十八歳の視点

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「お似合いのカップルに見えるけど?」  ファッション雑誌から抜け出したような相手は液晶画面の中でぎこちない笑顔で並ぶ自分たちをどこか痛ましげに眺めている。  都会育ちの裕福なこの子からすれば、俺らが随分貧しく野暮ったい風に見えるのだろうか。  だが、そうなると、自分はともかくハルはお祖母ちゃんと二人暮らしで学校に通いながらアルバイトして家計を支えている偉い奴だ、苦労知らずのお嬢様から憐れまれる筋合はないと反発する気持ちも微かに生じた。 「こいつは母親同士も友達で産まれた病院も同じの兄弟みたいなもんだから」  ハル、何でこんな写真をLINEのアイコンと背景にしてるんだろう?  後ろに映っているのだって花盛りの桃畑とかならともかく何の変哲もない俺の家なのに。  自分はLINEのアイコンは「覇王別姫」の虞姫の装いをしたレスリー、背景は香港の夜景にしている。  本来の自分の顔や日常より好きな物や憧れのイメージにしたいからだ。
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