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「ミオコにはそうなの?」
そそくさとスマートフォンをポケットに仕舞い込む自分を相手はまだ痛ましい何かを含んだ目で見詰めている。
「彼氏とかそんな色気のある話、私にはないよ」
男物のダボッとした黒いTシャツの胸の前で手を横に振った。
胸を含めた体の線が紛れるように敢えて男物(身長一五六センチ、体重四十八キロの自分の体格的には男性のSサイズでもかなりダブダブになる)のTシャツにハーフパンツを合わせて着ている。
だが、今はそういう自分がいかにも垢抜けない、どちらの性別に転んでも全く魅力のない姿に思えた。
「何、恋バナ?」
不意に後ろから声がして振り向くと、中背くらいの、さほど派手でもなく地味過ぎもしないシャツに紺地のジーンズを履いた、顔立ちもこれまた特徴に乏しい男子学生が笑顔で立っていた。
あれ、これは誰だったかな?
英語サークルの慣習として名前を呼び捨てにし合ってはいるものの、正直、まだ知り合って日も浅い同士である。
美咲は赤ちゃん猫じみた笑顔で答えた。
「ミオコの幼馴染が写真見せてもらったらイケメンなの」
「ああ」
名前の分からない男子学生は打って変わって気のない顔つきでこちらを見やる。
――何だ、こいつかよ。
――美人の隣に並んだ田舎臭えブス。
そんな心の声が聞こえてきそうな無愛想さにこちらもムッとする。
俺もてめえになんか一ミリも興味ねえ。名前も覚えてないし。そう叫びたくなる。
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