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男子学生はそんな自分の顔からTシャツの胸、爪先まで眺め回してフッと含み笑いする顔つきになった。
「彼氏、いるんだ?」
――そんな垢抜けない風なのにもうヤッた相手がいるのか。
――どうせ田舎だしヤリ目の男だろうけど。
そう言われた気がした。
「違います」
これは角の立つ応対だと知りつつ棘を含んだ声でそれだけ答えて書きかけのスピーチの原稿に目を落とした。半月後のスピーチコンテストまでに何とか形にしなくてはならない。自分は受験生として英語は苦手な方ではなかったが、帰国子女もゴロゴロいるこの英語サークルでは所詮中の下レベルだ。
「今日は一限から今までぶっ続けで授業あったからきつかったよ」
「大変だねえ」
新たに現れた男子学生と美咲は親しく話し始める。
結局、彼女はどこでも目を引いてあっという間に周囲と繋がれるのであり、自分もその一人に過ぎないのだと思わざるを得ない。
自分が仮に本当に男でも美咲のような女の子は高嶺の花だろう。
女性同士の恋愛にしたってもっと綺麗でお洒落な人がやっぱり好かれるのだろうし。
そう思うと、ジリジリするような焦りを覚えた。
とにかく自分が変わらなければ、東京でもずっと一人のままだ。
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