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「寒い?」
こちらに向けられた銀縁眼鏡の奥の眼差しは飽くまで穏やかだった。
「あ、大丈夫です」
何だか先走った想像をしていた自分の方が嫌らしくてゲスな人間に思える。
大体、この人からまだちゃんと告白されて付き合い始めたわけでもないし、自分より一回りも上の大人なんだからいきなりそういう関係を迫ってもこないだろう。
こちらの思いをよそに相手はやや急ぎ気味に次の展覧室に足を進める。
「ここのクーチョー、ちょっと強いからね」
耳に飛び込んできた「クーチョー」が一瞬、間を置いて「空調」だと理解された。
日本語を外国語として学んだテディの方が母語として無意識に身に着けてきた自分よりある面では正確だと頭の片隅で妙に感心する。
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