第二十二章:心は変えられない――陽希十八歳の視点

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「マサくんも髪伸ばして結べばいいのに」  小学三年生の詩乃ちゃんは楽しげな笑いを含んだ声で続ける。 「うちのクラスのミチル君は私と同じくらい髪長くしてポニーテルにしてるよ。ランドセルもおんなじピンクだし」  いや、それは名前からして親が「本当は娘が欲しかったから」とかいう理由でそういう格好をさせられている、一種の虐待に遭っている子ではないのか。  そう思ったところで無邪気な声が自分と幼馴染が並んで腰掛けた後ろのシートにまで響いた。 「男の子なのに変」  すぐ隣の薄桃色の肌をしたか細い項の辺りに微かな震えが走るのが見て取れた。
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