第二十二章:心は変えられない――陽希十八歳の視点

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――文武両道で男の子とも付き合って医学部に入るような子もいるのに、あんたはバレエも大して上手くもならなければ頭も悪いんだから。  亡くなった母ならそんな風に貶す材料にしただろう。  突き放した調子の棘棘(とげとげ)しい声が耳の中に聞こえてくるようだ。  だが、陽子おばさんは他所の子供の優秀さを無邪気に褒めはしても、ミオやその場にいる別な子を比べて貶したりいじけさせたりする方には行かないのだ。  この人が近くにいてくれたから、俺にしても亡くなった母にしても十四年間、表面的にでも親子として暮らせたのではないだろうか。  誰も自分の良い可能性を信じてくれる人の前で醜くはなりたくないのだ。
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