第二十二章:心は変えられない――陽希十八歳の視点

11/12
前へ
/319ページ
次へ
「陽希は都内の方に就職の希望を出すことにしたんですよ」  それまで前のシートで黙っていたお祖母ちゃんがポツリと声を出した。 「IT系の会社に志望を出すことにしました」  お祖母ちゃんは俺が上京することに同意して休み前の三者面談でもその方向で決めたのに、やっぱり寂しそうだ。  お祖父ちゃんもお母さんももういない家に一人だけになるのが辛いのだ。  お母さんが生きていれば四十七歳だし、お祖母ちゃんももう七十二歳だ。  夕飯の後に肩を揉むと、肉が薄くなったというより皮一枚被った骨がゴロゴロ掌にぶつかってくる感触が強くなった。  そんなことを思いながら、運転席の貴海伯母さんと助手席の陽子おばさんに聞こえるように極力覇気のある口調で続ける。 「明日は朝早くから新幹線に乗って職場見学に行きます」  ミオはまだ休みで実家にいるのに、俺とお祖母ちゃんはわざわざ泊まりがけで東京に出るのだ。 「俺が見学している間、お祖母ちゃん、ゆっくり買い物やお茶でもしてるといいよ」  お祖父ちゃんの遺産(そんなに大金ではないにせよ)、お祖母ちゃんの年金とパート、俺のバイトと父親からの養育費で暮らす家計でもたまにそのくらいの贅沢なら出来るはずだ。
/319ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加