第二十三章:君はいつも隣に――美生子十九歳の視点

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「いえいえ」  蒲公英(たんぽぽ)色のセーターを着た隣の母が和風ハンバーグをフォークとナイフで切り分けながら小麦色の顔の二重になった顎を震わせて笑った。 「私も一年ぶりに東京に来たかったですから」  ガラス越しの白ともピンクともつかない淡い花霞を示すように見やる。  こちらはまだ五十前の顔だ。  母もいわゆる(たる)みの見える中年の面輪になったが、ハルのお祖母ちゃんと比べれば格段に若さが残っている所に安堵を覚える。  そもそも亡くなった清海おばさんと同い年だから、うちのお母さんもハルのお祖母ちゃんからすれば娘ほども若い女性なのだと今更ながら思い当たった。
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