第二十三章:君はいつも隣に――美生子十九歳の視点

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「ミオ、具合悪い?」  ハルは何かを察した風に尋ねる。 「いや、ちょっとお腹が冷えただけだから大丈夫」  食事の席だし、月経や生理という言葉は出したくない。 「普通に食べられるよ」  手付かずの海鮮丼に勢い良く箸を入れる。  朝、出てくる前に、夜用のショーツ型のナプキンを履いてきたし(そもそも他人の新居のトイレに使用済みナプキンという汚物を残していくのも失礼に思えるし、本物の男であるハルの新居のトイレにはそんな汚物入れも設けていないだろう。かといって使用済みのナプキンを隠して持ち歩くのも嫌なので夕方の帰宅まで交換せずに済むようにした)、元より上下とも真っ黒な大きめのジャージを着ているので仮に経血が漏れて滲んでも目立つ心配はない。  だが、実質はオムツと変わらないものを着けて「お前は女だ」と主張するように痛む子宮を抱えて人前に出ているという状況そのものが屈辱であった。
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