第二十三章:君はいつも隣に――美生子十九歳の視点

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 ネットで目にした、胸に真一文字の切り傷めいた、というより実際に縫い合わせた切り傷そのものの術痕を着けた、今、十九歳の自分よりも年下の少年(生得的な性別で言えば『少女』)たちの姿がまざまざと頭の中に蘇る。  率直に言って、彼らが生まれつきの自然な男性には見えないし、自分が手術を受けても恐らくそうなるのは予想が付く。  大体、俺は百六十センチもない、女としてもちょっと小柄な部類なんだから、男だったらチンチクリンの貧弱な風采だろう。  「宦官」と呼ばれる去勢手術を受けた昔の中国の男性官吏たちが飽くまで男性として畸形な様態であって決して純然たる女性に見えたわけではないように、性別適合手術を受けたトランスセクシュアルたちも元の身体的性別の名残を多かれ少なかれ引き摺った姿になるのだ。
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