第二十三章:君はいつも隣に――美生子十九歳の視点

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――私は今となっては後悔しています。  これもネットで見た、一聴すると男性としか思えない低い声で語る、やはり外国人の若い女性の姿も浮かんできた。  いわゆる「デトランス」と呼ばれる、トランスセクシャルとして性別適合手術は受けたものの新たに違和や不適応に陥り、元の性別での自認を主張し始めた人だ。  思春期からのホルモン投与や性別適合手術が盛んになった地域では新たにそんな問題も起きている。  海鮮丼にどうやら醤油をかけ過ぎてしまったようだと舌打ちしたい気持ちでグラスのお冷をしょっぱくなった口に流し込む。  氷の溶け込んだばかりの水は飲み込んだ後もスッと尾を引くように胸を冷やした。  自分もいざ手術を受けて平たくなった胸に切り裂いた跡を目の当たりにしたら悔やむのだろうか。  ホルモン投与して男そのもののような声しか出なくなった時にやはり「女に戻りたい」と切に願うのだろうか。
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