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「キヨも苺好きでしたよ」
隣の母親は何でもない風に笑って返すと、メニューを取り上げた。
「食べ終わったし、白玉餡蜜でも頼もうかな」
肥った小麦色の丸い笑顔はセーターの鮮やかなダンデリオンイエローを反射したように明るかった。
「私はちょっと今日はデザートはいいかな」
俺も自分のセットを食べなくちゃ。
正直、もう残したい気持ちで冷め始めたしょっぱい醤油の滲んだご飯を詰め込む。
「そういやたまにお母さんと外でアイスを食べてもいっつも苺味のを二つ買って、それぞれ一つずつ食べる感じだったなあ。それには全然疑問も不満もなかった」
向かいから幼馴染の独り言じみた呟きが聞こえた。
「一種の遺伝なんだろうな」
清海おばさんはもういないのに母親について語るハルは固い顔と声だ。
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