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「さて今日は俺の引っ越しだけど、もう一つの記念日でもあるね」
仕切り直しという風に向かいに座る幼馴染が笑う。
“もう一つの記念日”
ギクリとした自分に対して、向かい側の席では淡い花霞を通した柔らかな昼の陽射しがハルの固く真っ直ぐな黒髪と切れ長い目をした小さな蒼白い顔を照らし出している。
――君はもともと可愛いよ。
不意にテディのキャラメル色の顔と銀縁眼鏡の奥の笑った目、日本語を話す時の母語の時より半オクターヴ高くなった声が蘇った。
何故こんな時に思い出すんだろう。確かにハルとテディで似通った顔貌はしていたし、テディとよくデートでしたように飲食店で向かい合って話している状況ではあるけれど。
こちらの思いをよそに幼馴染は傍らに置いていたグレーのリュックサックを開けて中から青いギフトフラワーを付けた小さな箱を取り出した。
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