第二十三章:君はいつも隣に――美生子十九歳の視点

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***** 「名前入りのUSBメモリーが作れるサービスを見つけたから、そこで作ってもらった」 「そうなんだ」 “Mio.N”  赤茶けたレザーのカバーには細字の筆記体で黒く印字されている。 「本当にありがとう」  こいつは俺が「美生子」という古臭い上にいかにも女らしい名前を嫌っているのを知っていて「ミオ」という呼び名の方で作ってくれたのだ。  そもそも装飾品ではなくUSBメモリのような実用的な物をくれたのも多分性別を意識せずに済む配慮からだろう。 「ハルのプレゼントは今度の土日にでも一緒に買いに行こう」   下腹部の鈍い痛みを感じていないフリをして笑顔で告げる。 「じゃ、欲しいもん考えとくよ」  満開の桜を透かした柔らかな陽射しを浴びながら、一足先に社会に出る幼馴染は曇りない笑顔で答えた。
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