第二十四章:二人のメモリー――陽希十九歳の視点

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第二十四章:二人のメモリー――陽希十九歳の視点

「それでいいの?」  街路樹の桜ももう黄緑の葉桜に切り替わりつつある今の晴れ空の下では少し暑そうに見える、狭い肩を隠した大きめの黒いジャケット。  細首を補強するように襟を外側に折った、ブルーグレーのタートルネック。  脚の線を覆う焦げ茶色のワイドパンツ。  そんな服装に女性としては中背よりやや小柄な体を包んだミオは冬の間にザンギリ頭からミディアムショートにまで伸びた頭を傾げた。  マイルドな男装だが、タートルネックのブルーグレーに反発するような薄桃色の丸い顔や栗色の柔らかな前髪に半ば隠れた大きく円な瞳、ジャケットの広い袖口から突き出た小さな手を見れば女と判る。  こいつがどれだけ男に紛らした格好をしても、間違い探しのために描かれた絵のように女としての特徴が自ずと浮かび上がってくるのだ。
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