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「あれ、誰?」
人混みの中で辛うじて黒髪の頭だけが小さく確かめられる相手にはもう届かないだろうが、むしろぞんざいな言葉を聞かせてやりたいような気持ちで隣の幼馴染に尋ねる。
ミオはまだ固まった面持ちで遠ざかっていく異邦人を見詰めている。
その様子を目にすると、カッと胸の奥が余計に燃え立つのを覚えた。
こっちを向け。
そう告げたい気持ちで頭一つ分小さな幼馴染の顔を覗き込む。
「中国語の先生とか?」
日本人ではないし、年齢からしてもそれが相応しく思えた。
もしかして、教室ではおっかなくて苦手な先生だったりしたのかな?
そう考えると、多少あの男が安全で許せる存在に思えた。
「いや、留学生だよ」
ミオは苦しくても取り繕わなければならない時の笑顔で訂正すると、まるですぐ傍に立つこちらにすら聞き付けられるのを恐れるような小さな声で付け加える。
「一応ちょっと付き合ってた、元カレみたいな人」
思い切り頭を殴られたような、殆ど身体的な攻撃を受けたに近い衝撃が走った。
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