第二十四章:二人のメモリー――陽希十九歳の視点

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「ああ」  ミディアムショートヘアの相手はまるで懺悔するように円な目の睫毛を伏せて答えた。 「去年の五月から夏前くらいまで付き合ってた……のかな」  今になって何故そんな曖昧な言い方をする。 「元カレってさっき自分で言ったよね」  そして俺のことは“同じ地元の友達”とあの男には紹介した。  どちらもミオの中では事実なのだろう。  ふっと目の前の相手が今度は憐れむ風に微笑んだ。 「テディとはすぐ別れたから、そこまでの関係にはなってないよ」  “そこまでの関係”  否定されたにも関わらず、裸の美生子と眼鏡を外したあの男の抱き合っている姿が浮かんできて胃の中の物が逆流してくるような感じを覚えた。  いちいちそんな想像をして過剰反応する自分が下劣なのだ。  そう思うと余計に嫌になったが、黒い炎が燃え立つのは抑えられなかった。
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