第二十五章:心に合わない器《からだ》、器に沿わない心――美生子十九歳の視点

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***** 「俺は明日は三限からだからちょっと遅くても大丈夫だけど、ハルは明日も仕事だよね?」  個室の居酒屋で一緒に飲もうと相手から昨日の夜中にLINEしてきたのだが、それが少し気になった。 「そうだけど、明日はもう金曜日だし、ちょっと一緒に飲みたくてさ」  黒の立襟のポロシャツを着たオフィス帰りの相手はどこか寂しいものに底を潜めた笑いを浮かべてお通しのイカの塩辛を箸で摘む。 「ぺーぺーのくせにこんなこと言うのもあれだけど、仕事はやっぱりダルいよ」  長い睫毛を伏せると、眼の下の隈が浮き上がって見えた。 「そうなんだ」  ハル、もしかして、仕事が上手く行ってないのかな?   ちょうど入って三ヶ月目くらいで会社を辞める人も世間には少なくないらしいし。
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