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「正直、悲しくないよ」
こちらの腹まで見透かしたように相手は吹き出した。
「生まれた時から一緒に暮らしてないし」
乾いた声で語ってサワーにまた口を着けて今度は大きく飲んだ。
「葬式ももう向こうで済ませたらしいから俺もお祖母ちゃんも出てないし」
十九歳でもう産みの父母を亡くした幼馴染は今度は皮肉な色の混ざった笑いになる。
「ジジイ、再婚しててさ」
ジジイ、と吐き捨てたところでハルの皮肉な笑顔に一瞬、引き攣れた風な痛みが走った。
「一応、そっちの奥さんと分割する形だけど俺にも遺産が入るみたい」
今度はまるで他人について語るように淡々と続ける。
「ま、遺産なんて言うほど大金じゃないだろうけど」
そこまで語ると、今は自活している相手はふっと嘆息とも安堵とも取れる息を吐いた。
「良かったね」
そう答えるのが適切かは自信が持てないまま返事をする。
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