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「それはもう十分稼いで余裕のある人だろ」
向かいに座す相手は穏やかだが重い声で答えて首を横に振った。
「俺は受験料と入学費、四年間の学費を払った上でそこで暮らせるかをまず検討しなきゃいけないから」
“四年間の学費”と挙げた声の厳しさで、ハルが実際にはずっと前からこの件で何度も検討して諦めた現実が窺い知れた気がした。
やはり親に基本の金を全て出してもらってせいぜいが小遣い稼ぎのアルバイトしかしたことのない自分が甘いのだろう。
「お祖母ちゃんにもう負担は掛けられないしね」
相手は今度は憐れむ風な、しかし、底に暖かさのある笑いで続ける。
「お祖母ちゃんこそ一番割を食った人だよ。娘が離婚して戻ってきて、孫育てしてさ。お祖父ちゃんもお母さんも先に死んで、自分は今もパートしてるし」
「ハルのお祖母ちゃん若いし、元気じゃん」
そういう問題ではないとは知りつつ言わずにいられない。
「自分を余計者みたいに思わなくていいんだよ」
お祖母ちゃんだってたった一人の孫息子をそんな風に思ってはいないだろう。
だが、相手はどこか虚ろな、こちらの肩から後ろに広がる壁までも見透かす風な眼差しに変わった。
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