第二十五章:心に合わない器《からだ》、器に沿わない心――美生子十九歳の視点

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「手術……」  こちらを見据える相手の目に張り詰めた光が宿った。  ピシリと凍り付いた空気が自分の背筋まで震わせる。 「やっぱりやるんだ」  強いて笑った風な幼馴染の目には変わらず追い詰められた動物じみた光が点じている。 「俺もネットでちょっと見たことあるけど、胸や子宮を取って代わりに性器を男の形に作ったりホルモン注射して髭を生やしたりするやつだよね」  語りながらも相手の蒼白い顔は更に紙じみた生気のない色に変じていく。  どうやらハルは俺が認識している以上に性転換手術に恐怖や危機感を抱いているのだ。
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