第二十六章:置き去りの夏――陽希十九歳の視点

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 あれはやっぱりミオには受け入れられないことだったのだろうか。  ただ、俺にあれ以上殴られるのが怖かったから、拳でぶん殴られるよりは肉体的な苦痛がまだ軽いから従っただけなのだろうか。  平手打ちした時の柔らかな頬と細い骨の感触、自分を見上げてたちまち潤んだ円らな目が蘇る。  その時も傷付きやすい桃が手の中にあるように感じた。  性別も体型も覆い隠す風な黒い上下も胸を平たく見せる仕様らしい肌着も全て脱がせてみると、元から薄紅の勝った肌のふくよかな乳房も丸い尻も全てが桃じみて見えた。  触れれば滑らかなゴム(まり)じみた張りがありながらも柔らかだ。  雨に濡れた服の張り付いていた肌はほのかに汗ばんでいたが、項の辺りからは微かにレモンじみた匂いがした。
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