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第三章:スカート、リボン、ピンク。――美生子三歳の視点
「ミオちゃんはようちえんいくの?」
いつも通りの黄色いトレーナーを着たハルくんは目を丸くする。
「うん」
ママが着せてくれた制服のスカートの足と足の間をまだひんやりしたものを含む風が音もなく吹き抜ける。
これだからスカートは嫌いだ。
お気に入りの裏がフカフカした群青のズボンがいい。
でも、ママはこれが幼稚園の決まりだから着ろと言う。
「もう三歳だから」
別に幼稚園になんか行きたくないのに。ハルくんと公園で一緒に遊んでいたいのに。
ひらひらと白ともピンクともつかない桜の花びらが肌寒い風に乗って舞い落ちてくる。
この花は嫌いだ。
流れてきた湿った土の匂いに鼻の奥がつんと微かに痛むのを感じながら、地面に落ちた透けるように薄い花弁を見下ろす。
ママの着せたがる服や結びたがるリボンやゴムは大抵こんな色をしている。
自分が好きなのは青や水色だ。
本当はリボンやゴムで髪を縛るのも嫌いだけれど、今日は制服のスカートを履く代わりにピンクのリボンやゴムではなく空色のリボンとゴムでお下げ頭に結った。
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