第三章:スカート、リボン、ピンク。――美生子三歳の視点

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「ぼくも三歳だよ!」  普段と同じ服を着た相手は切れ長い目を驚いた風に見開いた。 「美生子ちゃんは三月生まれだから今年から幼稚園に行って、ハルくんは四月生まれだから来年からだよ」  ハルくんのお祖母ちゃんが苦笑いして孫息子の切り揃えた固く真っ直ぐな黒髪の頭を撫でる。  今日は普通の日だから、ハルくんのママではなくお祖母ちゃんが公園に一緒に来ている。  うちのママと違ってハルくんのママは普通の日は働いているから、わざわざこの前も土曜日に四人で自分たち二人の誕生祝いをしたのだ。  本当はどちらの誕生日でもないのに。 「なんで?」  ハルくんは寂しげに呟くと、切れ長い瞳を伏せる。  そういう顔をすると、ハルくんはハルくんのママに本当にそっくりだ。 「来年には一緒に通えるから大丈夫だよ」  小麦色の顔でにこやかに告げると、こちらも普段は着ない桜色のカラースーツ姿の母親は真新しく、そして袖も丈もやや余り気味の制服を纏った娘の手を引いて早足で進んでいく。
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