第二十七章:共生――美生子十九歳の視点

1/10
前へ
/319ページ
次へ

第二十七章:共生――美生子十九歳の視点

――ガタガタガタ、ヒューッ……。  走り出した列車は女の裏声じみた音と共に速さを増していく。  今日は休みの日だからやっぱり優先席までいっぱいで座れない。  車窓に目をやると、青空と林立するビル群の風景に蒼白く浮かび上がった。  ショートカットとおかっぱ頭の中間じみた、半端に伸びた髪、藤紫のTシャツとワンピースの境界めいたロングシャツから覗く緩いスパッツの脚。  事情を知らない人が見れば、単に垢抜けない装いをした女子学生と思うだろう。  あの日から一か月余り。  ひたすら逃げて隠れる内に自分はどんどん「女」に戻った。
/319ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加