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「じゃ、行くか」
相手は強いられた風に笑って歩き出す。
ハルのアパートがある方とは反対側の出口だ。こいつも敢えて俺を安心させようと襲った場所からは離れた所に行こうとしているのだ。
夏の陽が射し込む出口に向かって相手より三歩程遅れて歩きながら、同じ方向に進む他の見知らぬ人たちまでが安全を演出するための無意識の協力者に思えた。
扉を出ると、カッと八月もまだ上旬の陽射しが照り付ける。
今日は山の日だ。
こんなちょっと歩くだけで熱中症になりそうな日にわざわざ登山する人も少ないだろうと思いつつ歩く眼の前には、郷里の青々とした山の代わりに鉄筋の建物が並んでいる。
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