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「昼、まだなら好きなもん奢るよ」
視線の先にはファストフードやエスニック料理のテナントの入った雑居ビルがあった。
こいつは俺に食事を奢ってくれようとしているのだ。
それで自分のしたことを少しでも取り戻そうと、俺の中に積もっている不信や憎しみを和らげようとしている。
だが、この再会は手短に終わらせなければならない。
サッと日蔭に入った所でサンダルの足が止まった。
「あのさ」
息を吸って一気に吐き出す。
「妊娠してた」
蒼白い腕を晒したまま日向に立つ相手は“知ってたよ”と言う風に穏やかな、しかしどこか諦めの滲む笑いを浮かべて頷いた。
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