15人が本棚に入れています
本棚に追加
/319ページ
第二章:七夕の二人――清海《きよみ》の視点
「こちらが本気で離婚するとなったら、自分はやり直したかったのにお前が勝手に出て行って生まれた息子にも会わせてくれないとか言い出して」
日陰でも蒸し暑い公園のベンチで話しながら自分でもうんざりするが、それが他ならぬ私の結婚生活の顛末なのだ。
「つくづく自分のことしか頭にない人だった。そういう男を選んだ私が一番馬鹿なんだろうけど」
他人の話として聞けば、私だってそんな得手勝手な男を選んだ女こそ見る目のない馬鹿だと思う。
「運が悪かっただけだよ」
彼女は寂しく笑ってこちらの背を優しく撫でる。
昔からそうだ。
愚痴を溢すのは私で、慰めてくれるのは彼女。
自分が男なら彼女と結婚して良い夫婦になれた気がする。
最初のコメントを投稿しよう!