第三章:スカート、リボン、ピンク。――美生子三歳の視点

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***** 「いやだ、おれも水色がいい!」  ああ、やっぱり自分を「おれ」と言うと、幼稚園の先生も変な目で見るんだ。 ――『おれ』じゃなくて『わたし』っていうんだよ。  ママもいつもそう言って聞かせてくる。 「美生子ちゃんは女の子だからピンクの体操着なんだよ」  同じデザインでも男の子は水色、女の子はピンク。  それがこの幼稚園指定の体操着の仕様だ。  他の子たちは疑問なく性別通りの色を身に着けて泣き喚いている自分を離れた場所から眺めている。 「水色じゃなきゃいやだ」  自分は男なんだから。  そもそも女の子でも水色が好きな子は沢山いるじゃないか。  ディズニーのお姫様やプリキュアにだって水色のドレスを着たキャラクターはいるじゃないか。  男の子でピンクが好きな子も目立っては言わないだけでいるかもしれないのに。 「ピンクはいやだ」  それが「女の子の色」ならば。  何故自分の好きな色を選べない?  怪訝な顔で見やる周りの誰も答えてくれないまま、ワアワアと自分の泣く声が頭いっぱいに響く。
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