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「お父さんお母さんにも昨日電話で話したけど」
テーブルのすぐ隣に座ったため、白いTシャツの胸元が突き出て――これは一般的なブラジャーを下に着けた格好だ――かつ伸びかけた栗色の後ろ髪が微かに先を丸めた形で襟足に垂れている姿が認められる美生子が切り出す。
「お腹にはもう赤ちゃんがいるし、ちゃんと結婚して産んであげようと思うんだ」
“結婚して産んであげよう”なのだ。
決して“結婚して産みたい”ではない。
今更ながらにまた胸に影がさしたところで向かいからの視線を感じた。
「二人で話して決めたことなのかい」
美生子に良く似たピンクの勝った肌をした、しかし、風貌としては黒く真っ直ぐな髪は既に薄く、物柔らかな一重瞼の細い目をした父親は疑問と確認ともつかない、曖昧な口調でこちらに語り掛ける。
どこか虚ろな表情にも、この時期の部屋着にしては明らかに堅い紺の開襟シャツを纏った男にしてはやや小柄で華奢な肩にも、まだ学生の娘が妊娠した事態やその相手への怒りよりも戸惑いが色濃く漂っていた。
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