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風というほどの勢いもない冷えた空気がニットワンピースの下に履いた黒のマタニティレギンスの脚の間を通り過ぎていく。
これからもっと寒さの厳しい季節になるだろう。
膨らんだ腹を抱えて常のせいぜい三分の二ほどの歩幅で進む自分を道を後から来た人たちが次々追い越していく。
動作が鈍くなるのと反比例するように嗅覚の鋭くなった鼻に油と雑多な調味料の混ざった匂いが流れ込んできた。
これは駅の出口近くに軒を並べた飲食店からのものだ。
ここまで来ればいつも乗る駅はもうすぐだ。
腹の中からはまだ小さな足が、しかし、こちらが身震いするほどの強さを持って蹴り上げてきた。
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