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第三十章:窓辺の母娘――再び陽子の視点
「光ちゃん」
病院特有の消毒液臭い匂いにミルクの甘い香りの入り混じった、産科の病室の窓辺。
――ガタン、ガタン、ガタン……。
廊下からは時折思い出したように台車の過ぎていく音が響いてくる。
私は胸に抱いた真っ白なタオル地の肌着に包まれた温かな重みに呼び掛ける。
「おっきいねえ」
初孫となるこの子は三四四三グラム。二八八二グラムで生まれた美生子より六百グラム近くも重い。正に二割増しの重さだ。
かつて我が子を初めて抱いた時よりズシリと腕に来る感じはこちらが老いたせいだけではないだろう。
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