第三十章:窓辺の母娘――再び陽子の視点

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「僕が生まれた時は四〇〇〇グラム近くあったってお祖母ちゃんが言ってましたから似たんでしょうね」  傍らの椅子に腰かけたハル君はどこか苦いものを潜めた笑顔で語る。  ここでいう“お祖母ちゃん”とは生まれた赤ちゃんではなくハル君本人にとってお祖母ちゃん、私にとっては“キヨのお母さん”または“笹川さんちのおばちゃん”――もう“おばちゃん”と呼んでいたこちらも“おばあちゃん”になったわけだが――のことだ。  今日はあいにく法事とのことだが、あちらも明日には曾孫(ひまご)に会いにいらっしゃるらしい。  頭の中でそんな整理をしつつ、笑顔で今や娘婿となった相手に頷いて胸に抱いた赤子に語り掛ける。 「ちょうどパパママの真ん中だね。重さも誕生日も」  予定日では四月二日の今日だったが、一日前倒しでこの子は生まれた。  美生子が三月三十一日、ハル君が四月二日だからちょうどその間に生まれた格好だ。 「家族三人でお誕生日ラッシュ」  この数日間で美生子とハル君は二十歳(はたち)になり、新たに光が生を()けた。  自分も来月には四十九になる。五十まですぐだろう。
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