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「おれ、三歳だから七五三で着物着てお参りしたんだ!」
緩い天然パーマの髪を纏めて挿した緋色の花簪を揺らしながら美生子はいつもの調子で語る。
「ぼくも三歳だよ」
それなのにピカピカした着物も着てない、神社にも連れてってもらってない。
黄土色のコートを纏った自分が急に惨めに思えた。
このコートも、中に着ているトレーナーやズボンも、再従兄の雅希くんから全部お古で貰ったものだ。
靴だけは何とか新しい物だけど。
足元を見下ろすと、爪先の少し薄汚れた自分の黄色いスニーカーに対して、向かいの美生子は着物と同じく真新しいピカピカした下駄を履いていた。
いつもより少し目線が高いのはこの履き物のせいだったようだ。
それでも、自分の方がまだ頭半分ほど背が高い訳だが、何となく相手から見下ろされている気がした。
「男の子は五歳でやるんだよ」
おばさんが楽しみは先にあるという風にウキウキした調子でこちらに頷いた。
ママよりおばさんの方がこんな風に落ち込んだ自分の表情にすぐ気付いていつも声を掛けてくれるから好きだ。
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