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「あらあら、かっこいいねえ」
ママたちが開いたミニアルバムのページには抹茶色の羽織に白と黒の縦縞模様の袴を穿いたハルくんが刀を構えて映っていた。
自分の三歳の七五三で緋色の花簪に真っ赤な被布の着物を着せられて写真を取る時に持たされたのはすぐに破けそうな紙貼りの傘やきらびやか過ぎて触れるのに気後れするような御殿鞠だったのに。
「おれもそういうのが良かったな」
口に出してから大人二人の振り向いた顔に後悔する。
「あ、わたしもそういう着物で剣を持つのが良かったな」
ママは自分が「おれ」と言うと、「『わたし』でしょ」といつも直させるのだ。
だが、言い直しても、母親は何だか引きつった風な苦い笑いを浮かべている。
その表情を眺めていると、今しがた飲み込んだばかりの白桃の後味が急に舌の奥で酸っぱくなるのを感じた。
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